ダン・バロンは非常を知らせるけたたましいサイレンの音に我に返った。
宇宙港管制センターでの職務中に彼をおそった白昼夢は、大惨事寸前の事態を引き起こし、・・・ダン・バロンはそこでの自分の居場所を永遠に失った事を知った。懲戒シートに記された自らの名前。まるで死んだ者のように周囲から孤立する毎日。意気消沈する彼を導く運命と必然。
地球帝国の技術を伝えるために事実上の左遷扱いでオルトン領へと赴くダン・バロンが出会うのは異星の男達の異様な風習、異邦人である自分に向けられる奇異の目・・・そして彼をおそう『炎の女』の白昼夢。
誰かが彼の心の中で呼ぶ。
カーソンへ行け!・・・と。
ダーコーヴァ貴族達が統治する七領土のはずれ「風上の高地」ではそのころ、無法者の手におちた城から決死の脱出を試みる少女がいた。メリッタ・ストーン。山地に孤立したストーン城が無法者ブライナット・スカーフェイス一党の急襲を受け、占領されてしまったことを誰かに伝え、助けを求めなければ! 城に残された兄の言葉が彼女の中にこだまする。
カーソンに行け!・・・と。
やがてダン・バロンの精神を支配し始める謎の男の声。
助けを求め、ただひとり険しい山中の強行軍を続けるメリッタ。
彼らが目指すカーソンにいったい何が待つというのか。
自分の血族と領民を守るための力と翼を欲した哀れな男の決意とは?
風雲急を告げる風上の高地!金の鎖につながれた炎の女神がその姿を現す!
「いいえ、彼はそうしますとも。こんなことがあったあとで地球人の中でどうやって暮らせばいいっていうんです?」
(どんな法律を破ろうと、わたしは気にしない。やつらの手中にある私の妹と弟、何世代にもわたって私の家に仕えてくれた村の連中がわたしの法律だ。)
「あなたは、だれなの?」
-----------「レイディ。ストーン城はこの世界で、このとんでもない惑星で、おれがどこより行ってみたいと思っている土地だよ。」------------- |