ダーコーヴァの4つの月に48年に一度の合が近づく。そんなある日、宇宙港にある地球本部長官のオフィスにひとりのダーコーヴァ人の育年が訪れた。青年の名はレジス・ハスター。ここ、ダーコーヴァにおいて最高の権カを持つハスター家の後繊ぎ。彼は地球帝国にひとつの取引を申し出た。
「トレイルマン熱を退治するのに手を貸してくれたら、逮ぱれた地球人何人かにマトリクスカ学を伝授しよう。」
マトリグスカ学!
それこそは地球帝国が100年もの間、手に入れようとして手に入れられなかった秘密……ダーコーヴァ世界を支えるダーコーヴァの文明そのもの……どんな中間段階も経ず、物質をエネルキーに、エネルギーを物質に転換させてしまう非因果科学論……そして地球人が超能力と呼ぷもの!
地球人たちは色めき立った。何としてもこの計画は成功させなければ!! しかし、致死率87%というこの病気を治す方法はただひとつ。ヘラーズの山の奥深くに住む謎の非人類知的生命体、トレイルマンの血から血清を取り出すことだった。ただちに地球人とダーコーヴァ人の混成部隊が編成されトレイルマンの地に向けて出発する。そのリーダーは地球人、ジェイスン・アリスン。だが、ジェイスンには彼自身を悩まし続ける秘密があった。それは、自分がこの旅の間しか存在することのできない幽霊のような存在だということ。やがて、彼はその苦悩と葛藤のなか、ひとりの女性を愛し始めていることに気付く。
「カイラ、君の知っている僕という人間は存在しないんだ。僕はこの仕事のためだけにつくりだされた人間だ。仕事が終われば僕もおしまいってわけさ。」
そして、この苦悩から彼を救える者はたったひとり。いまは彼の友人となった、ダーコーヴァのテレパス、レジス・ハスター。
「地球の医学が君の心をおもちゃにしているんだな、ジェイスン! たとえ地球医学で100万人の生命が助かっても ──だからといってこんなことを許すわけにはいかない!」
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