レジス・ハスター。ハスターの血をひく者として自らの歩む道を定められてしまった少年。
15の年、彼はその道にひとつの反乱を試みた。
──宇宙ヘ…!
それはまだ見ぬ世界へのあこがれ。自分自身からの逃避。だが、やがて彼は知る。それが決してかなえられぬ願いであることを…。自分の血の中に眠っていた“力”が目覚めはじめてしまったことを…。それはレジスが無選択のうちに“ハスターの後継者”とならねばならぬことを意味していた。
ルイス・オルトン。愛称ルー。温厚誠実にしてオルトン家の正当なる世継ぎ。だが、ひとつの事実が彼の人生に暗い影をおとす.なぜなら彼は地球の女の腹に宿された子であったから….その彼にコミン評議会からある命令が下された。
──アルダランヘ
そこで彼が知ったのは、2千年ものあいだ忘れ去られていた真実。
(地球人とダーコーヴァ人には同じ血がながれているんだ!)
アルダランこそは地球文明とダーコーヴァ文明とが理想的な融合を遂げた地であった。その理想郷がかいまみせた光景は、理想にもえる若きテレパスたちに、夢を与え、希望を与え、…そして足元に隠された落とし穴を見抜く目を失わせた。その計画の為に彼らが手にしたのは太古に封印された邪悪の石、シャーラのマトリクスだったのだ。
雪つもる冬のアルダランで女神シャーラが解き放たれる。一瞬にして廃虚と化すカエル・ドンの街。希望に満ちた若者達の心さえも蝕み、蹂躙する邪悪の女神。暴走する女神の力は固く結ばれていたはずの人々の心の絆をいとも簡単に破壊していく…。
シャーラの暴走を自らに死を科してまでもくい止めようとするルーとマージョリー。そして否応なく事件に巻き込まれていくレジスとタニロ。
「マージョリー、こんな安易な方法は取れない。たしかにぼくらは死ぬ。だけど、ぼくらの死を利用しなければならないんだ。」
「選択の余地はない。備わってしまったものなのだから。唯一の逮択肢は“力”を誤用することか、敬意をこめて直面するかだ。」
─── どちらにせよ前にあるのは地獄だけだ。 ─── |