ダーコーヴァの超能力科学がもっとも栄華をきわめたその時代-----それは時には、人が人であることをさえ許されない悲劇の時代であった。繰り返される生体実験まがいの配合・・・人間の遺伝子改造。より強い超能力を求めて、人は背徳を繰り返す。
だが、その背徳からすら背を向けられた一族がいた!
アルダラン家、そしてロックレイブン家。
その超能力遺伝子に致死遺伝子を伴うがため、ダーコーヴァ貴族たちの忌むべき「交配計画」から、幸運にも縁遠くいることの出来たアルダランの当主が選んだ伴侶はだがしかし、おそるべき天候コントロール能力を持つ家系、ロックレイブンの女! その超能力は女子に優勢遺伝し、そのあまりにも強力な力ゆえ・・・・・
その少女は、嵐の夜にうまれた。いや、嵐を「呼んで」産まれた。娘の持つ強力な”力”のために絶命した母の命と引き換えに。
同じころ、やはりその忌むべき遺伝子の中に眠る ”力”ゆえ、命を落としかけた男がいた。道をあるくその一歩ごとにさえ、目の前に扇状に広がる幾百もの未来を見てしまうその男は、狂気の一歩手前に必死の思いで食い下がり、決意する。
自分は決して結婚はしない。決して子どもはつくらない。・・・この”力”を子孫に伝えてなるものか、と。
だがやがて、手に入れた強い力を戦争に利用しないではいられない人間の狂気は、やはりこのダーコーヴァの地においても人々を恐るべき超能力戦争にかりたて、度重なる背徳が神の怒りに触れたか、あるいは皮肉な運命のいたずらか、すべてのさだめが人々の思惑とは逆の方向に流れてゆく。権力を求めた者はその身を滅ぼし、平安を願った者は動乱のただ中へなげやられ、愛を捨てた者は恋に堕ち・・・・
そう、しかし人が戦いを求めるのと同様に、常にその傍らで愛を求める者たちがいる。
幼さゆえの、攻撃的なまでの純真さで皆を愛し、愛されようとするアルダランの少女ドリリス。
自らに愛を禁じながら、妻となるべき運命の女性に出会ってしまったオーラート・ハスター。
「おまえには不思議に思えるかもしれないが、娘よ、愛は喜びを分かちあうのと同様、悲しみを分かちあうことからもうまれるのだ」
------------愛を求める少女の叫びが、嵐を呼ぶ--------------。
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